なんで自分はここにいるんでしょう。
確か俺は友人から借りた本を家で読んでたはずなんです。


でもここは……病室?入院した覚えは無いんですが。もしかして、事故にあったから覚えが無いとか?
しかし患者は白衣を着ないでしょうし。というかその下には緑の軍服着てますし。


スプリングのきかないパイプベッドから背を離すと、ギシッとベッドが軋んだ。
注意深く辺りを見る。なぜだかひどく頭が重い。まるで長時間酷使された後みたいだった。

そのままぼんやりと宙を見つめるが、違和感を感じた。
目の前に淡い色の糸が垂れてて視界が悪い。
払いのけようと引っ張ったら、頭皮が攣って痛かった。
その痛みで頭が正常に働きだす。



白衣に名刺ほどの大きさのカードがついているのを見つけた。誰の白衣なのか分からないと返しにいけない。ぺらっと表を見る。


Name:=
Grade:銀河連邦宇宙軍准将
Job:連邦軍中央本部 軍病院院長







…………は?



あれ、これ、俺の名前ですよね。准将だなんて、夢にしてもやけに太っ腹な設定です。

それにこの写真も手が込んでる。わざわざ色を変えてるなんて。
俺は黒髪黒目ですよ。こんな灰色の髪とか緑の目じゃない。



そのときふと何かが引っかかった。
この髪の色はどこかで見たことがある。


恐る恐る目線を上げると、そこには写真にあるままの色があった。

慌てて鏡をさがすと洗面台の上にあった。駆け寄って覗き込む。






―――――――――誰だ、これは。







銀と見まがう、見事なアッシュブロンドの髪。長さが肩を越していたので後ろを振り向くと腰の辺りまで伸びている。
それだけだったならば染めたか何かだと思えるが………。


そっと自分の目のふちに指を這わせた。小さな写真では分からなかった色彩。
翡翠色の瞳に金粉が散ったようなもやがかかっている。

コンタクトのような不自然さもない。でも、こんな目は自然には作り出せるものではない。少なくとも、自分の知る限り。




その顔が自分だと認識できるのは、顔立ちだけは変わっていないからだ。




呆然と鏡に見入っていると、ピッという音とドアの開く音が聞こえた。


「起きたのか、


淡々とした、それでも安堵を滲ませた声が背中にかけられた。

鏡では自分の影で見えない。

ゆっくりと振り向く。



まず目に入ったのは高い位置にある銀の髪。そして濃い黒のスクリーングラス。自分が着ているものと同じ軍服。


先ほどまで読んでいた本の登場人物と重なる。
友人に薦められて読んだ、遠未来の物語。
唯我独尊ついでに傲岸不遜そして紛れも無く最強であろう男。主人公の父親。
その男に似ていた。


いや、その目を逸らしたくなるような美貌まで同じだ。

つい名前が口を出た。



「オリビエ―――?」