br>




『Fate小ネタ寄せ集め』











「――――――国を失ったかアーサー王」
セイバーはズガンと頭を殴られたような感覚を覚えた。とっさに胸を拳で抑える。
「いや違うか。―――国に滅ぼされたのだったか」
「ちが」
苦しい。それが胸の痛みゆえか、それとも幼子のように自分を守ろうとしたのか。ただ言えるのは………この、闇を切り裂いて見据える金睛眼が、焔のような眼光が、責められているようで――――――こわ、い。
「ち、がう。失ってなど、いないッ!私はっ、  まだ!!」
「王よ。紛うことなき騎士王よ。ウーサーの子。ペンドラゴンを継ぎしもの。―――恐れるな、嘆くな、貴方が真に王であるなら。永久の繁栄など幻想だ。千年帝国などは夢に過ぎない。担うが人である以上国はいつか滅び、かくして王も斃れるものだ。――――――我らのように、な」







ふと親しく知った気配が近付いてくるのを警戒網の端に捉らえて、次いで苛立たしげな念がラインの一本から流れてきた。黙っていなくなったから、きっと怒っているだろう。ああ、ちょっと、ううんマジ怖いな。言い訳、聞いてくれない奴だし、アホ毛が下りて黒化していなければいいな。見た目は金髪の王子様なのになー……王様だけどな。
「そろそろお暇させて貰おう……私の連れがせっ突いているのでな」
「―――何もせず、見送ると思っているのか?フェイカー」
ゆるりと腰を上げれば、







「これは美味い酒の礼だ。馳走になった、英雄王」
最後、ギルガメッシュにだけ聞こえるようにぼそりとつぶやいた言葉は、彼の驚いた表情を引き出すことに成功したようだ。我様な傍若無人殿に一矢を報いたちょっとした満足感を得て、この良い気分のままセイバー(アルトリウス)と合流しよう、とヒラリと身を翻した………の、だが…………
「待てフェイカー。こっちへ来い」
「え?」
「さっさとしろ。王たる我に歩かせるつもりか」
え、え、え、もしかして逆鱗に触れたりしたのかっ?ちょっとかっこつけようと思ったのがいけなかったのか!?
パニくって呆然と固まる私はギロリと睨んでくるアーチャーに身の危険を感じてあたふたと傍に寄った。死の危険は不思議と感じなかったのが……。一応花びらの盾(ロー・アイアス)をいつでも投影できるようにイメージを構築しつつ英雄王の用件を待てば、いきなり顎をつかまれて顔を覗き込まれた。
「っ!」
「ふむ、美しいな……。朱金の髪に琥珀の瞳か。今でこそ琥珀色だが、先日の戦闘中は魔力を帯びて美しい金色になっておったな……金眼は神性の証しぞ、貴様のような技を使う神がいるとは聞いたことはないが。フェイカー、貴様は神の眷属か。もしくは我も知らぬような古の神の末裔か、隔世遺伝か………」
赤い目が、傲岸に不遜に私の中を探ろうとする。真っ赤な命の色は素直に美しいと賞賛できる。冷ややかと表現するしかない視線の奥は、微熱のようにじんわりとした火がたぎっていて、……とても熱い。半神半人の証の赤。心を無遠慮に土足で侵されるのはたまらない。だが、力強い、自身の力を信仰するほどに信じて疑っていない、支配者の誇りに満ち満ちた、目。
昔も今も、どうしても嫌いになれない。おそらくこれがカリスマAというものなのだろう。古今東西、神というのは人を引き付けるものだ。その身体の半分以上を構成する神性は、フェロモンに似たカリスマを発揮し、強すぎる覇気に人は服従と忠誠を誓いたくなり、反転して恐れと畏怖を抱く。呪いのごとく、対等で在れる者が彼の周りは現れなかった。かつて■■■・■■を取り込み“  ”へと押し上げられ、限りなく常世の■に近くなった私であっても、その特性はある程度はあるのだろう。
王とは孤独だ。王になるものは孤独を選択する者だ。孤高の路を行き、道連れを持たず、先だけを見らねばならない。王とはそういうもので、ギルガメッシュはその最古の実践者である。神魔が地上に遊び、幻想種は人と交わり、魑魅魍魎の跋扈する時代。まだ世界が一つであった頃、混沌と入り混じる人界で彼は王と呼ばれてみせた、覇者と、英雄と呼ばれるに相応しい男。目に映る全てを背負い、果ては世界の全てを背負った王。その彼が駆け抜けた生で、唯一得た友エンキドゥはどれだけ救いとなっただろう。神の指で奪われたそれは、いかほどの憎悪を、失う恐怖をもたらしただろう。それを考えると、嫌えない。同情だと笑えばいい。偽善だと罵ればいい。私は私がしたいことを私がするのだ。
私たちは、少し似ていた。より強大なものに求められ厭われた。
「……それは穿ちすぎというものだアーチャー。私は普通から少し逸脱しただけの人間だった。この髪も朱金と美しい言葉を使ってくれるのは嬉しいが、私から見ればただの赤銅色だ」
「それこそ戯言というものだ。お前は美しいぞ。この髪など黄昏の空のようだ。ククッ……この国では神を殺す色だったな。なぁ、神を滅ぼしたことはあるか?」
「…本来の意味は“偉大なる神々の終焉(ラグナレック)”だ。むしろ神を嫌悪する貴方にこそふさわしいのではないか?光の神の角笛が響き渡り、あらゆる束縛が解き放たれ、世界樹の蛇は海中から身を起こし、人界に憚ることなく神と巨人が殺しあう。スルトによって世界は焼かれ、九つの世界は海に没した………ほら、まるで貴方のことのようだろう(・・・・・・・・・・・・・・)?」