見たときから目が離せませんでした。





















最初に彼を見たのは柄の悪い浪人たちを相手に戦っているところ。



綺麗でした。まるで美しい一匹の獣が狩りをしているようでした。



助けなければと脳が叫ぶのに、身体はもっと見ていたいとしていました。
呆然としているうちに人質にされてしまいました。本当に不覚です。



ぶん投げようとしたとき、彼と目が合いました。
彼が最初にかけていた不思議な色つきの眼鏡は取られていて、彼の素顔をそのまま見ることが出来ました。



本当に綺麗でした。




不思議な色の黒と金の大きな目は穏やかな風情に眦が下がっているのに、そこに浮かぶ光は獣のように鋭くて。


でも私と目を合わせたとき、安心させるように柔らかになって。微笑んだ顔に見惚れてしまって。


身体は動きませんでした。




そしていつのまにか私は彼の腕の中にいて。



あまりの顔の近さにまた硬直してしまって。ちょっと悔しかったので平静を装って。



そしたらまた彼が魅力的に笑うものだから、赤くなった顔を隠すために彼の腕から抜け出て浪士たちをやっつけました。



彼は私が戦っていることに唖然と大きな目をさらに見開いていて、ちょっと嬉しかったんです。







その後、お礼として彼に京都の案内をしてあげました。
彼は別に礼は要らないといったのですが、もっと彼といたくて、彼のことが知りたくて強引に迫ったら、苦笑してじゃあお願いしますと言ってくれました。優しい人です。



案内している間に彼の名前はだということ、年は16で今は故郷を出て色々なところを旅して回っているということなどを聞きました。



正直驚きました。
彼の雰囲気は大人びていて、年上だとばかり思っていたのです。
それに16という若さで、一人で旅をするなんて。



そして、彼はとても頭がいいのです。


彼は自分が行ったという場所について様々な話をしてくれました。
一度、船で外国に行ったこともあるそうで、そこで医学も学んだそうです。


君が行った先々で見たもの、感じたものを語ってくれたのですが、とてもその考えが深いのです。



異国に通じている間者かとも思いましたが、それならば他人にこんなに知識をみせるわけがありません。



話せば話すほど彼に引き込まれてしまいます。





彼は始終笑顔を絶やしませんでした。私がある言葉を言うまで。



どうしてそんな苦しい顔をするのでしょう。


私は彼を綺麗だと思ったから、その目も容姿も人柄も綺麗だと分かったから、それを口にしただけなのに。



君は、私には少し難しい話をしました。



ゲンザイとは何かよく分かりませんでしたが、彼が産まれたときからつらくて、苦しくて、悲しんでいることはわかりました。



彼は自分を汚いといいました。


でも彼が汚いわけがありません。


汚い人間は、見ず知らずの者を助けたりはしません。



だから私は言いました。




「あなたが汚い人間ならば、話したこともないような者を助けるようなことはしませんよ。あなたがあの時動いたから、あの女性たちが傷つくことはなかったのです。」






こんな言葉で彼の心が救えるとは思えないけれど、それでも少しは軽くなりますように。





「あなたは人を生かせることができる人間です。そして、そんな君を私は綺麗だと思ったのですよ。」



彼は目を見張り、そして私を抱きしめました。



突然びっくりしましたが、肩にぽたぽたと水が垂れてきたのでじっとしとくことにしました。


きっと先ほどの私のように照れて恥ずかしいのでしょう。
こういうところは年相応ですね。





















「あなたが汚い人間ならば、話したこともないような者を助けるようなことはしませんよ。あなたがあの時動いたから、あの女性たちが傷つくことはなかったのです。」



沖田さんはそう言ってくれた。まだ会ってから一日も経っていない。それなのにこの人はとても優しい言葉をくれる。



俺の罪は償えるものではない。俺を許すことの出来る唯一の人は、今同じ空間にはいない。



それでも彼の優しさが嬉しくて。泣きそうになる。




「あなたは人を生かせることができる人間です。そして、そんな君を私は綺麗だと思ったのですよ。」




前言撤回。泣きそうじゃなくて泣く。




泣き顔を見られる前に沖田さんの肩に顔を埋めた。

必然的に抱きしめるようになってしまうが仕方が無い。




今まで俺は独りだった。


仲間というか、一緒につるむのは何人かいたけれど、深く入り込ませることはしなかった。


それは無意識の行動だった。


自己分析では、たぶん父さんとわだかまりがあることが原因だろう。

ガキの頃から抱き上げてもらった記憶もなく、むしろ仇のように見られて生活してきた。俺に能力がありすぎたことも原因だっただろうが、それだけではない、もっと根源的な隔たりが俺たちの間には存在する。



この世で最も近い関係の父さんとがこんな関係なのにどうして血の繋がらない他人と親しく出来る?
人前で泣いた記憶もない。

転んでもさびしくても、それらは全て自分で処理してきた。




だからだと。初めてだからだと自分で自分に言い訳をして、沖田さんに甘えてしまった。














この人の優しさに、いつか癒されることもあるかもしれないと、夢のようなことを考えながら。