マジでここどこだよ。江戸村イベントなんて今やってたっけ?


























森を抜けたら住宅街みたいなところが見えた。

みたい、というのはの中にある住宅街とは一見して相異なるものだったからだ。


まずコンクリートが無い。道は舗装されておらず、平坦ではあるものの土がむき出しである。
家は基本が砂壁と木と石らしく、屋根も木か瓦で出来ている。森を抜けた小高い丘から一望する限り、合成素材の鉄筋コンクリビルは無い。


「……まじここどこ。こんな田舎なところが21世紀に存在するなんて日本もまだまだ発展途上だ。」


あんな電柱も無いようなとこに、果たして電話はあるのだろうか。





























「……あ〜……とりあえず降りてきたのはいいけどよ。」

考えていても埒が明かないと村?に入った第一声。






「これ、現代じゃねぇだろ。」


聞こえてくる言葉は、いまどき使うやついねぇだろな感じの「〜どす」とか語尾に「〜え」とか、京訛り。
男は丁髷だし、女の人は櫛とか簪とかで髪を結い上げてるし。

着物の感じとか文明の発展具合からして、江戸の末期くらいだろうか。

新撰組については深く調べていたからそのくらいは分かる。ちょうど壬生狼が活躍している時代だ。


「タイムスリップか?」

出来れば夢オチを期待したいとこなんだがなぁ…。



あの人を切る感触が偽物だとは思えない。

「とりあえず歩こうかな……」

と江戸時代の京の町を散策開始。



「へぇ〜結構賑やか!」

表通りは小間物屋とか呉服屋とか、他にもいろいろな種類のお店がそれぞれ商売をしていた。

興味深げにそれらのひとつひとつを覗いていたの目に、女の人が絡まれている光景が飛び込んできた。



7,8人の柄の悪い男たちが二人の女性の腕を掴んでいる。



「だからのぅ、その荷物渡しゃあ許しちゃるって言っとろうが。」

「だ、駄目です……これは旦那様に頼まれた大事なもので……」

「そ、そうどす。大体最初にぶつかってきたんはそっちやありまへんか!」

「なぁ〜に言ってんだよ。先に肩ぶつけて謝りもせんでサッサ行こうとしたんはそっちじゃろうが。」



なぁとばかりに周りの野次馬を見回すが、誰も目を合わそうとしない。


(まあ、あんなふうに刀をちらつかされたら一般人には無理だよなぁ。)


どう見ても、浪人がいちゃもんつけているとしか思えない。


(あぁこういう場面、ピースメーカーにもあったけどまさか目の前で起こるとは。)


そろそろ浪人と思しき男たちも痺れを切らしてきたようで、力づくで荷物を奪おうとし始めた。



「いい加減渡せっちゅーとろうが!!」


とうとう一人が刀を抜いてしまった。新撰組はまだ来ないのか。こういうときは新撰組に
通達が行くものだったはずだが。


「仕方ない……」


あまり関わりたくなかったが、これ以上は女の人の身が危ない。


野次馬の輪の中から進み出て男たちと対峙する。



「なぁ、いい加減見苦しいんだが。」



一瞬の遮光眼鏡に気を取られたが、我に帰って怒鳴ってきた。



「あんだとこら!てめぇには関係ないだろうが!とっとと去ねや!!ぶっ殺すで!!」



刀を突きつけられる。その稚拙さに知らず溜息が漏れた。



「俺は今日始めて京都に来たんだが……こんなに品の悪いのがいるとは知らなかった。しかもか弱い女性に絡んで荷物を巻き上げようなんて、知性のかけらも無いようなことを…。」



呆れたように頭を振って言い放つ。

基本がフェミニストななので、これらの言葉は全て本心だ。挑発している自覚も無い。



「てめぇ……ぶっ殺してやる!!!」



一人の浪人が刀を構えて切りかかってきた。

女二人は怯えながらそれを見ている。他の男たちはいまだ腰の刀を抜こうとしないを腰抜けとでも思っているのか、にやにや笑って止めようともしない。


それにまた溜息をついて袈裟懸けに振られた刀を左に飛んで避け、通り過ぎざまに姿勢を低くしながら腰の刀を抜刀する。その勢いを殺さずに、男の右の胴を薙ぎ払った。このような町中で殺すわけにもいかず、接触の瞬間に峰に返したが。


悲鳴を上げて地に臥せて動かない仲間を見て、そこでようやく一瞬のうちに何が起こったのかを悟ったようだ。

そして目の前の男がただの侍ではないことも。


「てめぇ……なにもんだ?」


浪人の問いかけに、は悪役のようにニヤッと笑って見せた。そのような表情もの美貌ではかっこいいとしか感じられず、それを見た女性たちは(男も)顔を赤らめた。






「俺はただの根無しの旅人さ。」

そういう設定にしておこう。












まぁ、なにせ時代を旅したんだからな。