さてこれからどうするか。とりあえず森を抜けるべきだよなぁ。




























気絶させた男たちは放っておいて、殺した男を埋めた。




山道からは見えにくく、でもきれいな赤い花をつけた潅木の下に穴を掘り、死体を横たえて土をかぶせ、不自然でないように草を植えた。




死体を発見されないようにする意味もあったが、埋めてやろうという気になったからもある。



自分が初めて殺した人間。







先に仕掛けてきたのはあちらだから仕方ないにせよ、ここで死ぬつもりは無かっただろう。


家族もいたかもしれない。





そこまで考えてようやく自分のしたことの重さに思い立った。







呆然とした。





人を殺してしまったことよりも、それを躊躇無く行ってしまった自分の異常さに対して。










「ご…ごめん……っ!ごめんなさ……っ!!」




胸が破れてしまいそうだ。


あまりに激しい感情が指の先まで渦巻いている。










人を殺した。

自分が死なせた。








相手は自分を殺すつもりだった。


それもレイプしてから。

正当防衛も正しく適用されるだろう。



しかしは法律に触れることが怖いのではない。








人を殺し、そして平然としていた自分の心に恐れを抱いた。

まるで化け物ではないか。









遮光眼鏡の奥に隠された黒と金の瞳から、一筋だけ涙が流れた。




「はは…っ、笑えねぇよ…なんで人殺して……俺は平然としてんだよ……っ!」









怖くなるほどに、人を殺したことは自分の心に波を立てない。


ただただ、その静けさに恐怖を覚える。






その感情の水溜りの淵にはいったい何が潜んでいるのか。









少なくとも人間の形はしていないのだろうなと、一応科学者の称号を冠している者としては甚だ非科学的なことを考え、この思考に決着をつけた。




もう既に殺してしまった。

もう俺は殺人者だ。いまさら何を考えることがある。





はぐいっと涙を乱暴にぬぐうと、刀を腰に挿して歩き始めた。

いつまた襲われるか分からない。






あいつらはきっと見張りか見回りかだろう。
時間になっても帰ってこなかったら誰か不振に思って探しに来るだろうし、あいつらを見つけて俺のことを聞いたら100%追っ手を向けるだろう。





その前に森を抜けなければならない。






何人が相手だろうと死ぬ気はしないが、あんまり多いと手加減が出来ない。
こっちだって必死なのだから。



死ぬわけにはいかない。






父さんとまだ仲直りしてない。
共同でなんか研究してみたいし、互いの研究について議論を戦わせて見たい。
料理を作るのも一人では寂しかったが、きっと二人でなら楽しいだろう。









また一緒に暮らしたい。


普通の親子のようにはいかなくても、楽しいことを二人で笑いあいたい。









まだ何も叶っていないのだから、死ぬわけにはいかない。
たとえ、ヒトを殺してでも。






「いつか……母さんの墓参りも一緒に行けたらいいな…」


















さすがにそれは高望みかと、中性的な美貌に儚い苦笑を浮かべて、今度こそしっかりと地面を踏みしめた。