俺は布団で寝ていたはずだ。そのはずなんだ。じゃあここどこだよ!?

























……何か身体が痛い。

なんていうか、硬くてしかもでこぼこしてるところでうっかり寝ちまった時みたいに痛い。
しかも寒い。スースーする。まるで布団着てないみたい。


……意識が浮上してきちまった。


なんかヤな予感がする。現実逃避も潮時かなぁ……。



まずうっすらと目を開けてみた。そしてとたんに跳ね起きた。


「……は?ここどこ……?あれ…?なんで俺森の中……。」


それも寝巻きのまま。
誘拐?夢遊病なんて俺持ってたっけ。それとも記憶喪失?…だめだ、まだ頭が付いてこねぇ。くだらないことばかり思いつく。


少し落ち着いたので自分の身体をチェックした。
良し、身体は軋んで痛いけど外傷は無い。



次に辺りを窺ってみた。
あ、荷物発見。中身は……昨日準備したままだ。財布入れときゃよかった……。
色眼鏡と髪紐もあるな。そういや昨日枕元において寝たっけ。
とりあえず寝巻きよりゃ袴のほうが恥ずかしくないだろ。



寝巻きを脱いで着物と袴を身に着けた。

この着物はのお気に入りだ。
上の着物は暗くくすんだ藍色で、下の袴は黒。黒い足袋を履いて草履を履いて、髪をくくって色眼鏡をかけて身支度終了。


脱いだものは袋の中へ。
木刀と刀は二本持つのが大変なので、とりあえず木刀を腰に佩いて刀を袋に入れたまま肩にかけた。真剣を堂々と持っていたら捕まってしまう。


「とりあえず歩くかぁ。人に道聞くかしないと、ここどこか分かんないしなあ。まずは森抜けないと……。森の中のせいかなぁ…空気がきれい。」


携帯持っときゃよかったと呟いてが歩き始めた時だった。






「……おい。ちょぉ待てや。」


…ナンパかな。こんな森の中で待ってても意味無いだろうに。


「ねぇ、こんな森の中で引っ掛けようとしても女の子なんてほとんど来ないんじゃ……」

ないの?




と言いつつ振り返ってみたらびっくり着物着たお兄さんたちが五人もいたヨ。しかも刀に手ぇかけてこっち睨んでるヨ。…なんで?



「おまえどこのもんだ?長人にしちゃあ見たことねぇツラだしよぉ……まあ斬って埋めちまえば後腐れねぇか。」

「なぁ殺しちまう前に一発やっちまおうぜ。こいつすげぇ上玉だ。」

「好きにしろよ…俺ァやめとく。」



何この展開。なんか今俺殺されかけてるよなぁ。


てゆーかチョウジン……超人?ツァラトゥストラ…ニーチェ?


すっげぇ不愉快に笑いながら近付いてくんだけど。



会話によれば俺をこれから犯してから殺して埋めてしまおうということらしいな。


つまり強姦殺人。

女の子にモテナイ男の最悪形だな、俺は男だけど。

というか何で真剣持ってるんだろ。
どっかのやくざだろうなぁ、着物だし薄汚いし。

あ、『超人』ってやくざの組の名前かな?



けっこう酷いことを考えながらは真剣を構えた。
殺気には殺気をと教えられたせいも有るけど、こいつらがすごく不愉快だ。


幸いにも森の中だし。



最悪殺してしまったとしても埋めてしまおう。
やくざのトップだって目立ちたくは無いだろうし騒がねぇだろ。



「大人しくしてろよぉ?そうすりゃ気もーち良くしてやるからよぉ!!」



叫ぶと同時に突っ込んできた。
体制が低いし、まずは足をつぶそうとしているのだろう。





は冷静だった。




相手が本気で傷付けようとしてくるならば、こちらもそれに答えなければ失礼だろう。


軽く足を引いて一人目をかわし、その回転の勢いのままに相手の右腕を切り飛ばした。
一拍をおいて血が噴き出す。



「すぐ手当てすりゃ死なねぇよ。」



激痛に転げまわっている男を僅かに痛々しげな目で見やり、そして残りの男たちに視線を移した。

力を抜き、刃先を下げて戦う意思の無いことを示す。




「出来れば退いて欲しい。お前らじゃ俺には勝てねぇ。」




その言葉に男たちは顔を怒りに歪め、口々に罵りの言葉を吐きながら切りかかってきた。は溜息をついて刀を構えなおした。


一振りで二人の足を半ばまで切り裂いた。
上から振り下ろされた刀を左に避けてがら空きになった胴に峰を思い切り叩き込んだ。
崩れ落ちたその男を蹴り飛ばし、後ろからの横薙ぎの攻撃を人並みはずれた跳躍力で避け、男の頭の上を通り真後ろへ着地する。
いきなり消えたように見えたに混乱している男の首に刃を突きつけた。



「ちゃんと忠告はしたぜ。お前らじゃ勝てないから、やめとけってよ。」



咽喉をひくつかせて喘ぐ男に、はいっそ麗々とした声でささやいた。


自分よりも一回りは下の年齢の少年に男は得体の知れない恐怖を感じていた。
それはもしかしたら死への恐怖だったかもしれないが。













「じゃあな。」
















次の瞬間。
























男の首は地面に転がった。