なにも、難しいことを言ってるわけじゃない


俺が本当に、そう思うから    ここにいられる










居心地の良い闇の中







































「――――…っくしゅん!」


ぅあー、さびぃ。






ゴミと血と泥だらけの廃屋の中で、俺は凍える身体を抱きしめた。







上着はやや薄手のものが一枚。マフラーも手袋も、なんもない状態。
あえていえば、血まみれになった男達の死体と愛用の武器――ちっさいナイフなんだけどさ。
いや、ちっさくもない……けど、ふつうよりはちいさい。うん。
真っ赤になっちゃって、こんなとこじゃお手入れもできないよ。




俺は、一応処刑人だ。
一応っていうのは、ここにも来たばっかり、処刑人にもなったばっかりってこと。
ただ彷徨ってて、いつのまにかトシマに来て、どっかのお馬鹿さんに最近拾われて処刑人になったんだよ。
で、もちろん来たばっかりでトシマの地理なんざわかりもしない。っていうかこんな入り組んだ場所覚えてられるか!って感じで。
正直言うと、迷子で困ってますってことなんだよコノヤロウ!!


「だいったいグンジの奴が悪ィんだよ!…人が待てっつってんのにずかずかずかずか先進みやがって…!


ああもう、こんなことなりゃキリヲとくればよかった!
いや、顔は怖いけど意外とやさしいし…。戦闘シーンはえぐいですけど。…それはグンジも同じか。
もちろん、俺を拾ったお馬鹿さんというのは性格からしてわかるようにグンジのほうだ。
キリヲだって嫌いなわけじゃないけど、こっちで一番…信用?できてるのはグンジかな。
本人だいぶ馬鹿だけど。




で、その信用しかけていたお馬鹿さんが俺を放って別方向に逃げた獲物を追いかけていっちまったから、俺は今現在迷子なのですよ。
真冬の寒空の下でね!今は昔の風習で言うならクリスマスイブなんだぞ!クリスマス!!
ああもう、帰ったらビトロがケーキ用意しといてくれるって言ってたのになぁ…。
狗にも、可愛いクッションみっけたから買って用意してあるのに。ビトロには笑顔で充分だよ、多分。
キリヲには手料理つくってやるって約束したしー………ん?



…よく考えると、俺グンジのプレゼント考えてなぃ…?







キャ――――?!!


や、やばい事態が…?!どどどどどうしよう、あんな我侭っ子にプレゼント用意すんの忘れちゃったvとか言ったら絶対ぶっ殺される!!
なんか異常に帰りたくなくなってきた…!!




思わず頭を抱えて顔を青くした俺は――――その、接近してくる赤い影に、まったく気づけなかった。










がばっ



「みィーっつっけた!」
「うひゃぁぁっ?!」
「うぉっ?!」
「な、…?!……グンジ?!」
「んだよー、そんなに驚くなよォ」
「ご、ごめっ……ギャー!てめぇ、俺の服に血ぃべっとりつけんじゃねぇよこの鳥頭―――!!
「いでっ?!」



頭を抱えた俺を、突然後から抱きしめたグンジに悲鳴をあげる。
心臓が今びくんってはねたよ?!絶対跳ねたよ!!
しかもあいつの返り血がしっかり俺の服にくっついてるし!


「つーかお前どこ行ってたんだよ?!俺が迷子になっちまっただろ?!」
「んー、あいつら追いかけてたらさァ、郊外までいっちまってさァ。急いで戻ってきたんだよー、頑張ったんだぜ?俺ぇ」
「郊外ィ?!おっまえ、……それで、獲物は?」
「モチロンばっちり殺してきたァ〜♪」


俺の身体に後から抱きついたまま、上機嫌の時の声色でグンジがにんまりとわらう。
…強烈にそのシーンを想像してしまった俺は、気温の寒さのものではない悪寒を感じた。





「んじゃ、もう帰ろうぜぇー。俺腹へっちった」
「俺もだよ……。今日はケーキだし、クリスマスだし…。折角の夜が血まみれと迷子で散々だっての」
「ひゃははっ、迷子迷子ォ、やーい「お前の所為だろうが!!」
「痛ェ?!」



思わず握り締めていたナイフの柄でグンジを殴りつけ、俺は盛大にため息をつく。
最近…キリヲの動作が身についてきてしまったかもしれない……。





「いってー、いってぇ。ちっくしょぉ、ジジイと同じことしてんじゃねぇよォ」
「やかましいっ。お前はもう馬鹿だからいいけどなっ、俺は普通の躯なんだよッ!あーもう、風邪ひくかも…」


っていうかなんでこの気温でこいつはパーカー一枚で平気なんだ…。
いや、昼間は結構あったかかったけど。




「…ちぇー。折角がんばってさがしてやったのによォ…」
「………」

ぺろりと鉤爪を舌で舐めて、拗ねたように言ったグンジを思わず横目で見つめた。
たしかに…俺よりも、もっと。  顔、赤いし。


さっき俺を抱きしめた腕は、すごくつめたかった。




「……グンジ」
「あァー?」
「俺さ、お前にプレゼント用意してなかったんだよね」
「…はぁ?!マジで?!」
「マジ。…だからさ、今あげるよ」
「は?」



俺の言葉に、驚いたように叫ぶグンジにちいさく笑って、俺は冷たくなったグンジの指に、自分の指を絡めた。

それは、俺よりももっともっと冷たくて。
すごく、乾いていて、寒そうな指。






「ん、」

ちゅ、と 軽くその薄い唇に口付けて、俺はまた笑った。
互いに冷え切った唇。温まることはないけど、なんだか心のほうはすごくあったかくなる。

きょとんとした、子供っぽい顔を浮かべるグンジの手をぐっとひいて、俺はスタスタと歩き始めた。





「…マジで?」
「マジ!…さ、帰ろ?」
「……おう、帰ろぉ。腹へったしぃ」
「それさっきも聞いたよ」







繋いだ手はまだ、まだまだ、冷たいけど。
心から温まっていくのはたしか。







何よりも暗い、星にてらされた暗闇を二人で歩く。
ここは、すごく―――すごく









居心地のいい、  俺の居場所だ。





























俺の馬鹿――――!また名前変換ないよ?!びっくりだよ?!
なんでか名前が出てこなかった…ううう、ごめんなさい。でもがんばりました一応!
ってことで、これがクリスマスfree夢第二段!グンジ夢でした!