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銃の演習場。 新入生に混じって、別のブースには一般兵の姿も見える。 士官学校と兵卒の訓練場はさほど離れておらず、時間とスペースさえ空いていればどちらを使ってもいいことになっている。 「次!14番!」 教官の容赦ない採点による試射テスト。 まぁテストといってもこれが初めての銃の演習なわけで。 今日、銃に初めて触ったという生徒も少なくない。 だからこれはテストというより、これからどれほど伸びていくかを見るためのデータ採取なのだ。 「俺、あんまり銃使ったことねーんだよなぁ……」 演習場の後ろに座り込み、ぼんやりと呟く。 同じくぼんやりと座り込んでいるレノと、なんともなしに会話を交わしている。 「あぁ?銃使ったことねぇのかよ、と。」 ちょっと意外だ。 なんとなくバンバン撃ちまくってるイメージがあったから。 今日び、銃以上に手軽で使い勝手のいい武器があるだろうか。 「お前、笑ってバンバン撃ってるイメージしか出てこねぇんだが、と。」 「………なんかヤダなぁそれ。レノって俺のこと何だと思ってんの?」 ちょっと考えてるふうに上を見上げた。 「……女王様かな、と。こう…うふふって鞭を自由自在に。」 鞭を振り回してピシっと張るジェスチャーをしてみせる。そして即座に臨戦態勢を取った。 いつ殴られても逃げられるようにだ。 殴られるようなことを言った自覚はある。 筋肉を緊張させて攻撃を待つがなかなかこない。 そっとを伺うと、ドキッとするくらい真剣な表情でレノを見詰めていた。 「分かった、レノ。」 「な…ナニをかな?、と」 ドキドキとほんの少し期待しながら(何をだ)を見詰め返す。 はサングラスをポケットにしまい、真摯な煌めきをその美貌に宿してレノを見据えた。 「言葉には奥底に隠された願望が表れるという。」 「へっ?」 「俺はどちらかといえばノーマルなほうだけど、仕方ないな。」 「いや、」 「今度、蜜蜂の館に行こうな。さすがに寮では出来ないから。」 ふっ…と愁いを帯びた息を吐く。 何がなんだか分からないレノはその表情の艶めかしさに血が頭に上って、ぐらぐらと襲い掛かる眩暈と交戦中だ。鼻血を噴かないのは既に意地。 「マゾの気があるんならもっと早く言ってくれればいいのに……。俺、レノがアブノーマルだからって偏見なんて持たないよ?」 …………………………………ハッ? 「ぇ、あ、は……ハアァァァアッッッ!?」 「ダイジョウブだって。俺に女王様してほしンだろ?サドの気が無いわけじゃねぇから、きっと出来ると思う。幸い知識だけなら豊富だから。」 「待てッッ!!おりゃマゾじゃねぇぞ、と!!!」 「分かってるって、隠さなくていいよ。別に恥ずかしいことじゃないさ。これからのレノとの円滑な付き合いがかかってるんだから。俺、相棒として頑張るからさ。」 どこまでも話は明後日の方向どころか100年先くらいまで進んで行っている。 「ちょちょちょちょっと待ってくれよ、と!!ってかそーゆー知識を一体どこで」 「ジュノンの図書館読破したときな、館長さんに『サディズムのデカダンス〜涙から白目まで〜』を紹介されたんだ。」 「紹介されたからって読むんじゃねぇよぉーーーーー、っと!!!!」 「タイトルが気に入ってさ。」 恥ずかしげに俯くのも可愛いとか思ってる場合じゃねぇっ! ここは演習場である。 周りの生徒たちは2人を遠巻きに避けながらもディープな話に興味津津に耳をそばだてている。 幸いにも、あれだけレノが叫んでいたにも関わらず、まだ教官は気付いていないようだが。 「レノも読んでみる?貸してあげようか?」 綺麗な装丁本でな。と、また何かを叫びかけるレノの耳元に口を寄せて囁いた。 「傷は小さく痛みは最大限に……。拷問の基本だろ?」 囁かれた言葉の内容に虚を突かれたように沈黙した。 目を見開いてを見詰める。 「おまえ…」 「次っ!18番!」 「あ、俺だ。んじゃ行ってくんね。」 が教官に呼ばれたことで会話は強制終了となった。 片手をひらひら振りながら歩いていく後姿を見ながら、レノは頭を抱えた。 なんとなく、原因不明の頭痛がする。 あれか、つまりは拷問の知識を広げるためにSM本を読んだってことか。っつか何で拷問……。 「ジョオー様はどこまで本気だったんでしょうかね、と。」 期待した俺って……。みたいな心境だ。 だが、レノは知らない。 神羅の暗部の、更に闇の部分で暗躍する影たちが、どんな手段を用いるか。 彼らはあらゆる手段を使って目的を達成するのだ。 「十八番、=か…。銃を使ったことは?」 「以前に少し使う機会はありました。」 「そうか……では、肩幅に足を開いて銃を構えろ。」 「イエッサー」 とりあえず教本通りに銃を構える。 演習が始まる前に、解体から組み立て、構え、基本姿勢など、一通り銃についての説明はされていた。決して味方には向けるなということも。 銃はきっちり構えないと、反動で間接を痛めてしまうことがある。 発砲の衝撃を綺麗に殺さねば、弾は的外れな方向に飛んでいくし、ジャムが起こりやすい。 そして腕力が弱いと発砲の瞬間に銃全体が後退し、スライドが後ろに下がるためのエネルギーを吸収してしまい、スライドが下がりきらずに排莢シャムを起こしてしまう。 (この細身では………半分が的に当たれば良いほうだろう。) 教官は内心でそう独り言ちた。 の外見から判断してのことだ。 は華奢ではないが細身で、身長も軍の中では平均的だ。 この体格では銃の衝撃に遊ばれて、急所どころか的に掠れば良い方だろうと。 新入生の中で首席という成績には驚いたが、それゆえに頭でっかちの神羅社員志望だろうと辺りをつけた。 加えてこの美女と見紛う、見惚れるほどの秀麗な美貌。 とどのつまり、嘗めていた。 銃身を真っ直ぐに固定し、ガチリと撃鉄を持ち上げ、引き金を引く。 たったそれだけのポーズが見惚れるほどに雰囲気を出している。 発砲の衝撃にもまったく揺るがず、100メートル先の人型の的に向けて全弾13発を撃ち切る。 五発は頭、八発は心臓。 弾は吸い込まれるように的の中心に穴を開けていった。 ガゥンッと最後の一発を撃ったとき、演習場全体がホゥと溜息をつく。 それだけの、その凛々とした王者の風格に圧倒されていたのだ。 「…おい、的にゃ二個しか穴開いてねぇぞ。」 「二発しか当たんなかったのか?」 ざわざわと生徒たちが囁きあう中、教官は的を調べにいった。 そして信じられない結果に呆気にとられる。 「……=、成績S。――――驚いたな。二つの急所を狙い、その上一つの穴に複数の弾を通すとは。」 1ミリのずれも無いと静かな教官の発表に、周囲から感嘆の声が上がった。 それぞれが賞賛の言葉とともにの肩を叩いていく。それに首を傾げながらは踵を返した。 ぶっちゃけ自分のすごさが分かってない。 「やんじゃねーか。」 壁際に戻ってきたにレノが声をかけた。 「あー……ウン?アリガト。」 こてっと首を傾ける。 それを目にしてしまった周りの人間は、一斉に顔を背け何かぶつぶつ言っている。 (やべーよやべーってつーか俺はノーマルなはずで) (うゎなんであんなイイ男なのにかわいいてかかわいすぎ) (やっぱ告ろうかないやでもやっぱり) 脳内ノンブレスだ。 この三日目でようやく慣れ始めたレノも若干目を逸らしながら額に手を当て、諦めたように(呆れたように)笑った。 そしてには笑いかけながら周囲の頬を染めた男たちにはガンつけるという非常に高等な技を行っている。 もともと良くはない目つきが更に凶悪になって、免疫の少ない者たちはササッと目を逸らしていく。 「(テキが増えやがったか、と…。)あんま銃使ったことねぇって言ってなかったか?、と。」 「一月(ひとつき)くらい、冬山でサバイバルに暮らしててさ。食料っていったら木の実かモンスターかその辺の動物くらいで。」 「……なんで山?(というかモンスター?)」 「………………成り行き、かな?」 「いや疑問で返されても。」 「最初は遭難だったんだけどな。その間はずっと銃で獲物、仕留めてたから。死活問題だったし、嫌でも上達したよ。」 フッと微笑んで遠くを見詰める。 普段からそこそこテンションの高いにしては少し寂しそうというか、懐かしそうな顔をしている。 「まぁいいさ。それよりレノ、呼ばれてんぞ。」 「めんどくせぇな……。」 「そう言うなって。じゃぁ賭けようぜ。もしお前がランクS取れたら昼飯オゴッってやるよ?」 「よっしゃ俺に不可能はねぇぞっと。」 「取れなかったら一週間、俺の抱き枕な。」 レノはプライドを取るか欲望を取るか、教官に怒鳴られるまで真剣に検討していたという。 (結局はSを取ったのだけれど。) 〜おまけ〜 「すっげぇじゃねーか!全弾急所に命中なんて!!」 「あ、ありがとよ、と………」 「ん?なんか元気ねぇな。嬉しくねーの?」 「いや……俺はお前に褒められればそれで充分さ(抱き枕も惜しかったけどな、と…)…それにお前に比べりゃなぁ……」 「充分すげーよ!!約束どうり、昼飯奢ってやるから壱番街に行くぞ!」 「いちお、念のために聞きたいんだが、そこまでどーやって行くつもりなのかな、と。」 「そりゃモチ俺の愛車で!!」 「…………すまん。俺ちょっと腹がイテェから、一人で逝ってこい。」 「えぇっ!!??」 ++あとがき++ まぁ……微妙なテンションでお送りしてしまいまして、マコトに申し訳ございません。 結構適当です。その割に難産でしたが。 これは次のに繋ぐための閑話的に書いたもので、その間にとレノの射撃の腕について触れたかったんです。レノさんはあんまり目立っておりませんが、射撃に関してはに次ぐくらいで。 もちろん同穴連射なんて普通は出来ませんよ。管理人的に、ランクSは急所をどれだけ正確に射抜けるか、です。 |