ゴポリ




ゴポリ










―――オキナサイ





何の音だろう
眠いんだよ
静かにして




――――――オキナサイ、カワイイカワイイワタシノムスコ





ゴポリ    ゴポゴポ



耳元でうるさいよ。 誰だよ。 俺の親はもう死んでんだよ。

ちょっと待ってろよ、殴り付けてやるから。







そうやって、   俺は目を覚ましたんだ。




























俺……確かFF7をしてたんだよな。あのセフィロスとクラウドの切なくてすれ違い続ける物語が悲しくて、なんとなく、何度も見てしまう。


でもあれはゲームの話だろう?




俺は今、ガラスのポットみたいなものの中に入れられてる。その中には冷たくも熱くもない、緑の液体みたいなもの。それに浸されている。不思議と息苦しくは無いけど。



でも、すごく体がだるい。




「宝条博士、サンプル00が目を覚ましました。」

「ほう、そうか。ようやく……」




目は開いたけど、まだぼんやりとしか見えない。まるで長い間使ってなかったみたいだ。


甲高い耳障りな声がして、そいつはこっちに寄ってきてる。きっとこいつが俺をこんなとこに入れた奴なんだろう。


しっかり目に焼き付けて、ここから出た後ぶっ殺してやる。




足音が俺の正面で止まった。


「調子はどうだね、サンプル00。意識はあるか?」


俺は緩慢に頭を上げた。 クソッ!何でこんなに動かしづれーんだよ!

眼鏡をかけて白衣を着た貧相な男だ。ざらざらした爬虫類のような視線で俺を見てる。




「ふむ。反応はするようだな。」


するだろ普通は。


「お前は私の最高傑作だよ、サンプル00。意識があるのならそのまま聞いていたまえ。どうせ魔晄に浸されていては半分も理解できないだろうが。」


その男………宝条といったか。聞き覚えがある名前だけど………。あのマッドサイエンティスト?!っというかこれ魔晄?!



そいつはゆっくりと俺の周りを歩きながら、とんでも無いことを言い出した。


「お前はジェノバ・プロジェクトの研究で産まれた。たまたま古代種の男の精子が冷凍保存してあってな……クアックアックアッ!!あのガストはジェノヴァの細胞を受精卵に埋め込むなんぞと非効率的な方法で古代種を作ろうとしておったが、私はジェノバの体から生きた卵子を採取することに成功した!」


おいおい……ジェノバって古代種じゃぁないぞ。というかもしかしてここってFF7のゲームの中?
でもゲームに入り込むってよりは別の次元に入ったってほうが信じられるな。

ところで、さっきメチャメチャ聞き捨てならんことを言っていたような。


「そう!お前は古代種と古代種との間に生まれた純粋な古代種だ!クアックアックアッ!!そうそうガストが私の精子と人間の女の卵子で作った受精卵にジェノバの細胞を埋め込んで作った出来損ないもおったな……ジェノバの息子という点ではお前の弟に当たるか。サンプル01、名前はセフィロスといったか。今は10歳だったと思うが」



つまり、こっちの世界では俺はセトラとジェノバの混血ということになるな。
こんなの本編には無かった。やっぱり別の次元のもう一つの世界だって考えたほうがよさそうだ。

今セフィロスが10歳だということは、本編の15〜20年前か?セフィロスの年齢は公開されてなかったからな……。俺が今15歳だから、五歳違いの弟か。

………………きっと可愛いんだろうな。



宝条は愛しそうに俺が入っているポットを撫でた。


「あの出来損ないにも名前があるのだ。お前にも名前をやらんとな。―――セラフとしよう。王を冠する者の名。全ての絶対者たる名前だ。」


そのときの宝条の顔は少し親のような顔だったと思う。
でも、セフィロスを出来損ないだと言ったのは許せない。そもそもこのマッドサイエンティストのせいで先々迷惑がかかるんだ。



「私はこれからミッドガルに戻らねばならん。一週間後には戻ってくるからそれまでにセラフのデータを取っておけ。」

「わかりました。お気をつけて。」



宝条はせかせかと出て行った。後には俺の入ったポットと白衣の人間が二人。俺がいるのは薄暗くて、ちょっとニブルヘイムの魔晄炉に似ていると思った。

ポットは一つしかないから違うんだろうけど。



部屋の外、扉の近くに気配がある。感知能力が上がってるのはセトラの遺伝子か、ジェノバの遺伝子か、魔晄の影響か。とりあえず魔晄を浴びて平気だって事はソルジャー程度には強くなってるってことだよな。


いい気持ちはしないけど、宝条がいないうちに逃げ出さないと。そのためには能力が上がったことは役に立つ。

このポットはすごく硬い。
今は隙を窺うことだ。





「あの宝条博士が名前をつけるなんて、相当サンプル00に傾倒してんだな。」

「そうですね。僕、あの人がサンプルナンバー以外で呼んでるの、セフィロス以外では初めて聞きました。それにしても綺麗な子ですねぇ。」

「くくっ、股間のものがなけりゃ女にしか見えねぇな。」

「髪も長いですしね。」


俺はひそかに拳を固めた。
こいつらうぜぇ。絶対殺す。

確かに向こうの世界でも男っぽくないとは言われてたけど、女顔だとはっきり言われたことはなかった。
言い切る前に顔面を潰してたんだけど。




そのとき、俺はこいつらの言葉に違和感を感じた。
俺の髪は襟足を残して短いはずなんだが。


ひょいと後ろを見ると、もう長い長い。
艶が自慢の黒髪が足首まで伸びてる。

仰天して固まっていると研究員の一人が笑い出した。




「髪が長いことに驚いてるみたいだね。あのね、君は生まれてから15年間ずっと髪を切っていないんだから、男でもそのくらい伸びるよ。今からデータ採取のためにポットから出すから、邪魔なら切ってあげるよ。」

「言っても分かってないだろうさ。こいつ、頭の中身すっからかんだからな。」

「赤ん坊みたいなものです。仕方ないじゃないですか、今日初めて起きたんだから。色々話しかけてあげないと。」


こっちの俺は今日初めて起きたのか。どうりで身体がだるいわけだ。


若い方の研究員はいい人みたいだ。

でもこのオヤジのほうは絶対殺す。若い人は気絶させるだけにする。



「さっさと済まそうぜ。データ取るには急いでも一週間はかかるんだからな。宝条博士が帰ってくるまでに終わらせないと俺らが研究に使われるぜ。」

「はいはい。」


若い方が俺の近くにあるスイッチを押したら、ポットの中の魔晄が排出されていった。
完全に排出されたポットの中には長い黒髪が濡れて身体に張り付いた俺が残された。自分でも思うけど、なかなか扇情的な格好だ。俺は色が白いから。

「…こりゃすげぇな」

「うっわぁ〜…」



オヤジは鼻の下を伸ばしてるし、若いのはこういうのに免疫が少ないらしく顔を真っ赤にしてそむけている。



「おいさっさと出してやれよ。服着せねぇと風邪引くだろうが。」

「っあ!は、はい!」


慌てたようにポットのスイッチを押すと今度はヴーーーと音を立てながらポットが下がっていった。


俺は一歩、足を踏み出す。


「まだあんまり動いちゃだめだよ。先輩、タオル取ってください。」

「ほらよ」



身体を拭かせるに任せた。正直、まだ身体が言うことを聞かない。これでは逃げてもすぐに捕まるだろう。

一通り身体を拭かれたら、患者が着るような白の上下を着せられた。


「髪、綺麗だけどちょっと邪魔だね。切ってあげるね。」


椅子に座らされて首にビニールを巻かれる。

……………レイアー用の鋏なんて、どこにあったんだろ。


「髪長いの似合ってるし、背中辺りまでにしとこうか。」


じゃきじゃきと豪快に切った後は、重くないように細かく段を入れてくれた。すっごく上手だ。これなら本業でもいけるだろう。


前髪は他より短めにして、左右に分ける。


あらわになった俺の顔を見て、研究員たちは改めて感嘆の溜息をついた。


オヤジのほうが目の前に鏡を持ってきてくれた。実は意外といい人なのか?



まじまじと自分の顔を見た。

まだ幼い、柔らかな曲線を描く頬。知的に張った眉に、ばさりと音がしそうなまつげ。薄い唇はそれでも桜色に艶やかだ。アーモンド形の眼は本来の濡れ羽色を失くし、今は魔晄の色に翡翠の光を放っている。



「眼の色はセフィロスと一緒だな。」

「僕も一度だけ見たことあります。でもセラフくんのほうがセフィロスくんより若干、色味が強い気がしますが。」



眼の色が珍しくてずっと鏡を見てる俺を何だと思ったのか、苦笑して頭を撫でられた。


「これはな、鏡というんだ。光の反射で物の像を写し取るものだ。」

「鏡、だよ。言ってごらん?」


そんなの知ってるよと声を出したつもりだが、かすれたうめき声しか出てこない。長く声帯を使ってなかったからか?

それでも意地で声を絞り出した。



「……か………が…み……?」



情けない。

どうやら、しばらくはデータ採取に付き合わなきゃならないみたいだ。




時が来るまで、阿房のふりでもしておくか。




























++あとがき++



主人公の名前はほかにちゃんとあります。

最初はメタトロンかなぁ、と思っていたのですが長くて。天使階級上級第1位・熾天使(セラフ)から取りました。結局は同じ意味なので。
決して某映画のパクリではありません。

この名前はあまり使う機会は少ないと思います。




『メタトロン』

<神の玉座に最も近い場所に立つものだとされている。
ユダヤにおいて、ミカエルを凌ぐ最も重要な天使。
「神の顔」「契約の天使」「天使の王」「万物の創造主」「小ヤーウェ」
など、さまざまな呼称を持つ。

異説も多い。
ある伝承によれば、メタトロンは血に飢えた天使であって、
自分に背く人間を喜々として何百人も串刺しにして、
苦悶のうちに死なせてしまうという。
ゆえに、メタトロンはしばしばサタンと同一視され、
天上界に在ってのサタンの姿とされる。
あるいはまた、メタトロンの前身は『創世記』に登場する
エノクだとされている。
さらに数秘術によれば、メタトロンは神霊シャダイと同じ運命数を持つ。
つまり両者は同一だというのだ。>


<彼はメトラトン(Metratton)、ミトロン(Mittron)、メタラオン(Metaraon)の他、『タルムード』では七十二の別名を持つという。“天使の王”、“小YHWH”、“契約の天使”、などの称号を持つ。神の代理人との称号も持ち、大天使長のミカエルをしのぐ天使とも言われる。>




以上、調べてみた結果です。
この天使は全ての天使の頂点に位置している、いわば絶対らしいのです。ケテル Kether(王冠)という所の守護をしているそうなので、多少変えて使わせていただきました。

セフィロスとセフィロトの木を掛けました。すみません。