Just I wanna be with you.






ーーーーー!」

「ん?」


午前の講義を終えて昼食を取ろうと、校門をくぐったときだった。レノと雑談しながら歩いていると横から声がかけられた。
巡らせた視線が銀色の反射を捉えたと思ったら、次の瞬間には目の前にセフィロスの姿があった。の目でも豆粒ほどにしか見えなかったのに、ソルジャーの脚力をフルに使ったのか。能力の無駄遣いだ。

だがは目に入れても痛くないほど可愛いセフィロスが会いに来てくれたのが嬉しかったらしい。
よほど急いで走ってきたのか、勢いのままにぶつかってくるその身体を自分の身体を緩衝にして抱きとめた。
レノがチッと舌打ちするのが聞こえたがにとっては今は弟のことのほうが気にかかるのでスルー。


「こんにちは、かな。昨日ぶりだ」

「あ、あぁ。き、今日、たまたま仕事が、昼までで……その、ひっ暇で、散歩していた!」


それでを見かけて、とまだ息が整わないのか頬を赤くして途切れ途切れに言葉を紡ぐセフィロス。
身長差ゆえに必然的に(レノは計算だと推測している)上目遣いとなる弟には思わず抱きしめそうにひくつく腕を必死に抑えた。

兄の欲目を差し引いても年相応に非常に可愛らしい。サングラスを外していては緩む貌も隠しようがない。


「そっか。運が良かった、会えて嬉しいよ」


嬉しそうに笑っているその顔の美しさ。微笑むを見てセフィロスは口唇を綻ばせた。

硬質な美貌を蕩けそうに甘く崩すその笑顔は彼の弟しか受けたことがない。
それが気に入らないのか、眦を柔らかく下げているとは対照的に、元から悪い目つきをさらに吊り上げてセフィロスを睨みつけているのはレノだ。


「………てめぇ、昨日も仕事昼までだったじゃねぇか、と」

「………貴様に文句を言われる筋合いはない」


唸るように言うレノにこちらもに対するものとは180°異なる絶対零度の視線のセフィロス。
見ている時間がもったいないとでもいうふうに顔をのほうに戻すセフィロスに、レノはキレた。


「分かりやすいんだよてめぇっ!昨日も一昨日もここ一週間毎日毎日仕事サボりやがって!!」

「サボっていない」

「ほーおぅ。じゃー一昨日アンタの秘書が泣きながらてめぇを捜してたのは何だったんでしょうかね、と!」

「同名の別人だろう」

「ココ(ミッドガル)でSir付けで呼ばれてるセフィロスがテメー以外いるかーーっと!!つーかおま、いい加減から離れやがれ!」


本人たちは気付いていないが同じ年齢の少年らが口ゲンカしているのはその容姿の端麗さも相成って人目を引くと共に年上のから見れば非常にかわいらしい。その目は確実に二人を子犬か子猫に置き換えている。にじゃれ付く銀色の子猫に嫉妬する赤毛の子犬。

ぎゃあぎゃあと(一方的に)言い合っている少年たちを青春だなーと微笑ましそうに眺めていたは新たな気配に首を巡らせた。
その完璧に整った切れ長の双眸は近づいてくる二人組みを捉えた。


「あ、ルーファウス、とツォンさん」

!」


タタッと駆け寄ってくるルーファウスとそのお目付け役のツォン。相変わらず白と黒の対照的なスーツに身を包んでいる。
喧嘩していたレノとセフィロスは『邪魔な奴が増えやがった』とばかりに盛大に眉間に皴を寄せた。そのあからさまな表情に気付いたツォンは薄い口唇に冷笑を浮かべる。

足元まで来たルーファウスの金髪をぐりぐりと撫でてがツォンに目を移した頃にはツォンはもう柔らかな笑顔を浮かべていた。


「こんなとこまで来て危なくないですか」

「ルーファウス様がぜひくんに会いたいと仰ってね」

「もう会っただろう。とっとと帰れ、死にたいのか」

「君に会いに来たわけじゃないんだよセフィロス。ところで最近君はストーカーをしているらしいね、タークス宛に通報があったよ」

「なっ!!」

「匿名で『銀髪の刀持った危ない奴が毎日校門に立ってんですけど、と』だったかツォン?」

「貴様か赤毛!!オレはストーカーじゃない!!」

「毎日毎日昼間っから校門の前で待ち伏せてんののどこがストーカーじゃねぇんだよこのブラコン!!」


喧嘩が再燃し、すっかり保護者と子供に別れての会話となった。騒がしい子供らに比べて保護者組は穏やかな雰囲気が流れている。双方共に冷たい印象を与えがちな整った貌に、今ばかりは暖かい生きた表情が浮かんでいた。

もツォンも日常から感情を偽って生活している。
互いが浮かべる表情は気を許す相手に対してのみのものだった。


くんがいれば護衛に関しては問題ないだろうと思ってな」

「信用しすぎですよ…」

「それに私もくんに会いたくて、ね」


自分とセフィロスとの明らかに違う扱い(には”くん”付けでそれより年下のセフィロスは呼び捨てだ)を察する気配はまったくない。懐に入れた人間には無条件でフィルターが掛かるのがだ。
セフィロスとてツォンに良く思われたいわけではないので意に介さない。セフィロスが好かれたいのはにだけだからだ。それはレノにも言える事だが。

さりげなく会いたかったと伝えるツォンの心の裡には気付かず、実質世界を制している大企業の後継ぎが護衛一人で出歩いていることには呆れた。それでも本気では心配しているのだ。
その優しさを向ける範囲は狭いけれどだからこそ、は愛して愛される。

周りにとって悲しいのは愛されているのを本人が微塵も分かっていないところである。(だがそこもまた愛される所以だ)


「いつも危ないって言ってるだろルー。こわい思いをしたの忘れたのか?」

「だってとご飯が食べたかったんだ……」

「だからってなぁ……あ、ツォンさんナイフ持ってませんか?あれば貸して欲しいんですけど」

「あぁどうぞ」


躊躇い無く凶器を渡せるのはが其れで自分たちを傷つけるわけが無いと確信しているからだ。
ツォンはタークスとして彼の全てを信用することは許されないが、そのことだけは無条件で信頼していた。

柄を向けて渡された細身のナイフを手の平で遊ばせて、次の瞬間には高速で投擲していた。
セフィロスがやっと眸で追えるほどの速度で放たれたナイフは遥か遠くに聳え立つ高層ビルの屋上、寝転がってフェンスの向こうからスコープを覗いていたスナイパーの眉間へと吸い込まれていく。
狙撃手が頽れるのを視認してセフィロスは歓声をあげレノは肩をすくめた。


「JACK POT!!相変わらず有り得ない腕前だな。ツォン、第8ビルの屋上だ」

「ひゅー……すっげぇな、と。なんで銃使わなかったんだ?お前ランクSだろ」

「ちいさい子供がいるのに教育上良くないだろ?」

「僕のためにっ?」

「うぬぼれるなクソガキ」


キラキラと顔を輝かせるルーファウスにセフィロスは冷たい視線を遣った。その実、ただの嫉妬だ。そしてよく分からないもどかしさ。


「ターゲットはこのボーヤかね」


手を翳して目を凝らしていたレノがぽつりと言った。


「ツォンさん、あんた尾けられたんじゃないですか、と。今日お忍びでしょ?別にいンすけど、の手ェ煩わせるのはやめてくださいよ」

「レーノ、こんくらい何でもねェよ。まぁでもツォンさん、俺らまだ学生ですからね。あんまし巻き込まないで下さいね」

「それはすまなかった。ではすぐに君の卒業証書を手配しよう。くんがタークスに入れば何も問題ないだろう?」


それを聞いて黙っていないのはをソルジャーにしようと最初の邂逅で心に誓ったセフィロスだ。


「何度でも言うがはソルジャーになるんだ、引っ込んでいろプレジデントの狗」

くんの能力はタークスでこそ生かされる才能だ。ソルジャーになど勿体ない」

「どっちでもいいよ。僕はがタークスでもソルジャーでも一般兵でも護衛に付いてもらうつもりだからね」

「それは良いお考えですルーファウス様」

「オレの下士官に決まっているだろう!」


本人の意思を無視した勝手極まりないやりとりをぼーっと見つめる。
の未来設計書はどうやら彼の手には無いようだ。しかも誰かの側にいるのは既に決定事項らしい。


最近、の周りは騒がしい。一人で放浪していた頃とはあまりに環境が違ってしまった。何もせずとも周りで騒ぎが起きるのだ。それらを煩わしいと感じないことを不思議に思う。自分は静けさを好んでいるのに。


「今日はいつ昼飯を食えるんだろうな、レノ」

「知るか。あいつらに聞けよ、と」


セフィロスとの喧嘩は一時停戦らしい。
戦線離脱して隣にしゃがみこむレノの咥えた煙草に、指先に火を灯して点けてやる。目を眇めるレノに口に指を当ててみせる。
声に出さずにサンキュと告げるレノにこちらも口を動かさずにどういたしましてと伝えた。


弟と小さい友人と年上の友人の喧嘩はまだ終わらない。
最近のの日常はこんな感じだ。
苦笑して、今日のランチの献立を考えた。

店の店員にも心の内で謝っておく。
おそらく泣きたくなるほどに騒がしくなるだろうから。


いつまで続くか、明日も知れないささやかで幸せな日常。
それでも今は、ただこの時によりそっていたいと願った。




















++あとがき++

61616HITのつぅじぃ様に捧げます!
『FF7主で総受け夢』でしたがいかがでしょうか。正直自分でも分かるかコンチクショウというくらい分かりにくい総受けのような気がいたします。
セフィロスとレノは同じ年の設定ですから、きっとをめぐって微笑ましく喧嘩するんです。仲良くはないしお互い嫌いだけどに悪いものは同盟結んで排除するんですきっと。
ルーファウスはが大好き。なんでもいいからそばにいて欲しいんです。ツォンさんは一番年上ということもあって少々余裕を持ってます。言葉の端々が計算的。


Just I wanna be with you=ただ側にいたい
(お題配布処→『構成物質/rara』英語編よりお借りしました)
結局みんなの側にいたいんだ、ということです。自身もこのみんなと過ごす日常が大切で、いつ壊れるか分からないけど今は何も気にせずただ日常の側にいたいんです。



つぅじぃ様にのみ配布です。駄作ですが受け取っていただけると嬉しいです。感想寄せて下さったら管理人が泣いて喜びます。
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