アーカードが去った後もはしばらく立ち尽くしていた。




喧騒のもどった通りは


「ねぇねぇあの二人って恋人同士なのかなぁ!」

「それにしては雰囲気悪かったけど…別れ話じゃない?男の方は未練あるみたいだったし」


などという若い女の子達による勝手な噂話で持ち切りだった。



我に帰ったは急いでその場を離れてジークフリートとの待ち合わせ場所に向かった。

あの場にグランドメイ高校の生徒がいなかったことを祈りながら。












が去ってすぐにアーカードはその場に戻ってきた。

二人がぶつかった時にが見ていたカメオのネックレスを確認すると、そのかわいらしい、明らかにアーカードは店長のターゲット外だろうちんまりとしたお店に、その長身を屈めて入っていった。

数分後に出て来た時には綺麗に包まれた箱をポケットに入れて、どこか満足そうに見えた。



既に店の前では恋敵の二人が待ち伏せしていて、ひどくしつこい厭味を延々(主にアーサーから)聞かされたのだが。
























とアーカードが言葉を交わしているころ、ヘルシング家の主従コンビはワンブロック離れた店の屋根の上にいた。



との接触役がアーカードになったのは、まずウォルターは年齢が若すぎて駄目出しされたことから始まる。









「まずお前は無理だろう。」


「何でだよ!俺が一番あいつと年が近いだろ!!」


「だからさウォルター。この中で一番前途ある若者を、危険にさらすわけにはいかないだろう?危ないことは年上に任せておきなさい。」




ねっ?と慈愛に満ちた笑顔でこちらを見るアーサーにウォルターはブチ切れそうになった。



「(いっつも吸血鬼の巣の中に一人で行かせてんの誰だよ………っ!!!!!!)」



でも口には出さない。

というか出せない。




普段は穏やかで知性溢れる彼の主人は、に関しては変貌する。



黒い。

どこまでも黒い。

あのアーカードが嫌がるくらいに真っ黒くなる。






反論しようものならば、あとで何をさせられるか……!!


赤くなって、それから青くなった執事を見て、飼い主は(片付いたな。)と確信する。躾けはしっかりと刻まれているようだ。







ツーラウンド開始。

残りの普通の人間(ただし果てしなく黒)と最強の吸血鬼(一応下僕)の戦いが始まった。




まずにこやかにアーサーが先手を打つ。



「ここは僕が行くべきだと思うんだが。僕ならくんと面識もあるし、ある程度の信用も得ている。協力を得やすいよ。」





対するアーカードも神妙な顔をして言葉を放つ。



「いや俺が行く。お前を危険に晒すわけにはいかないからな。あいつと俺の気配は似ている。十中八九同族だろう。俺はお前が心配なのだ。」




それぞれがとの繋がりをほのめかす。





言質をとられたアーサーは、それでも退く様子は無い。



「……彼女が僕に何かするわけが無いだろう?僕はそこの執事や人間に飼われている吸血鬼ごときと違って、彼女に胸まで貸しているんだよ?もし君がいきなり会いに行ったら警戒されて話どころではなくなってしまうよ。そこの執事も君も、これが仕事だってこと忘れてないかい?スムーズに話を進められる人材が行くべきだとは思わないのかい?このボケ共が。」



さすがのアーカードの少しへこんでしまった。ウォルターなどは地に臥せている。肩が震えているところを見ると泣いているようだ。時折、鼻をすする音が聞こえる。

その後も話し合い(貶し合い・騙し合い・睨み合い)が数十分に渡って続き、だいぶ回復したウォルターがジャンケンを提案したのだ。ストップをかけなければいつまでも終わる様子が無かったから。



その結果、アーカードが勝利した。






























屋根の上の二人は双眼鏡でアーカードとの様子を覗いている。



「あのクソ野郎…っ!!あんなにくんにくっつきやがってっ………!!!」

「……アーサー様、キャラが違ってますよ。既に口調まで変わってます。」

「だってさウォルター!!なんであんなこらえ性の無い図体ばっかりでかくなった子供みたいな男をくんと会わせなければならないんだいっ?!」

「アーサー様がジャンケンで負けたからです。それに俺もアーカードが行くのが正解だったと思います。」



ウォルターも二度の経験で黒アーサーに耐性が付いてきたらしい。



「しかもあいつ何を言ってるんだよ…!あれじゃぁまるで僕が悪者みたいじゃないか!!」

「…………聞こえてるんですか?」



ここ、80mは離れてるんですけど。






「あ、また抱きしめやがって……って、あああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!!」



双眼鏡を覗いていたアーサーが、突如すさまじい悲鳴を上げた。



「どっどうしたんですか?!」



何かまずいことが起こったのかと慌てふためくウォルター。



「あ、あいつ……」

「はっ………?」





くんにキスした………」



固まった二人の間をヒュルリと風が通り抜ける。















「クク……クックック」「………フフフ……フフッ」





「………分かってるね?ウォルター。」

「えぇ……ぶっ殺しましょう。」

「許可する。僕もヘルシング家に伝わるあらゆる技術を駆使しよう。……あぁでも殺してしまったら吸血鬼との戦いが少々きつくなってしまうね。あんな頭の足りない奴でも力だけはあるからね…………仕方ない、精神攻撃で辛抱するとしよう。」

「殺していいんじゃないですか?が仲間になればあいついらないでしょ。」

「まだ未定だからね。それにあいつ、棺桶を人質にとれば何でも言うこと聞くから便利なんだ。」














そして店から出てきたアーカードは主従コンビの精神攻撃(嫌味)をくらい、さらに棺桶を燃やすと脅されての電話番号まで渡す羽目になったのだ。














あとがき:

なんだか最後ウォルターも黒いですね。それにしても私文才ありませんね、申し訳ございません。アーカードはかわいそうです。でもネックレスは守りました。