直感が言う。









世界が違う、と。





















「67年生きてきたけど、さすがにちょっと困りますよねぇ…。アチラとコチラと、どこかで交じっちゃったのか……」


こっちには身よりはおろか、顔見知りさえいないでしょうし。母さんは今、父さんが死んだことの感傷旅行に行ってるとこですしね。も一緒にとか言われましたが、二人の思い出に割り込むわけにはいきませんし。
二人で行ったとこ全部回るって言ってたから、十数年は戻らないだろうなぁ。世間にも親はいないことになってますし。




改めて気が重くなった。





「おい」





これからどうしますか。戸籍の書き換えから入ろうかな、でもこっちってどうやって管理してるか知らないしなぁ。






「おい君」





住むところも探さなきゃ。となるとまずはお金?学校にも通いたいですし。食事はそこで生気を吸ってればいいですし。



「聞こえないのか君!」



はぁもうどーしてこんなことに。私まだ若いのに(図々しい)。この元凶が分かったら何も言わせずぶっ飛ばしてや………



「おい!!!」




びくうぅぅ!!

「な…なに!」



耳元で怒鳴られて思わず飛び上がってしまった。
慌てて振り返ると20代後半程の男性がこちらを見て目を吊り上げている。顔立ちはアングロ‐サクソン系だ。


整えられたアッシュブロンドに目を引かれた。






「まったく!何度も呼びかけているのに返事も何もしないなんてどういうことだね?あぁ、私の名前はアーサーだ。君の名前は?」






その渋めでダンディなお兄さんは、英語で怒涛のように怒ったかと思うといきなり自己紹介をしてきた。



アーサーってあの吸血鬼漫画に出てきたな。でもこの人若いし、漫画の中とかありえないし。

勢いに押されてつい自己紹介してしまった。
英語はネイティブ並みに使える。伊達に長生きはしていない。





まだ夜は明けていない。目は伏せたままにして答えた。




「わ、私はです、ミスタ。」

「ミスタなんて堅苦しいねぇ。アーサーと呼んでくれて良いよ。
ところで君、どうしてこんなところにいるんだね?こんな夜遅く、というか明け方近くに。それに君、イギリス人じゃないだろう?名前からするとジャパニーズかな?」

「えぇ日本人、です。ここにはちょっと迷い込んでしまっただけです。そういうあなたはなぜここに?普通、人がいる時間帯ではないと思うのですが。」



とっさにごまかし、それ以上突っ込まれないようにこちらからも質問をした。相手が私を不思議に思うように、彼だってこんな時間にこんな森の奥にいるなんて怪しい。


しかし彼は表面上は普通に答えてきた。




「ああ、今日はうちの会社の仕事でこの森の調査にきたんだよ。ここの土地をただ遊ばせておくのはもったいないからね。」





しれっと答えていたが、私の耳には彼の脈拍が聞こえていた。



明らかに速くなった。


つまり嘘だ。



「そうなんですか、こんな時間まで大変でしたね……一人でいらっしゃったんですか?他にお連れの方は?」



また脈が速くなった。



「三人で来たんだが、先に帰らせてしまったよ。この森は空気がきれいだから、少し散歩がしたくなってしまってね。帰ろうかと思ったところで君に会ったんだよ。」



今度は言葉の途中から乱れた。最初の言葉は本当で、後半は考えた言葉なのでしょう。
まあ彼が本当は何をしに来ていようと自分には関係ない。


さっさと住むところを決めて自分のこれからを検討しなければならないのです。






いくらお兄さんが好みと言えど、今は優先順位が違います。