よし、だいぶ落ち着いてきました。
今は吸血鬼である母親譲りの身体能力と体力のおかげで苦もなく逃げているけれど、このまま一般人が住むところまで連れて行くわけにはいかない。
かといって朝になるまで逃げ続けてたらこちらがモたなくなってしまう。
太陽を浴びている間は普通の人間でしかない。
この体質も、普段人間の中で学生生活を送っている分には便利だったのだが、こんな状況では今は亡き父に文句も言いたくなってしまう。
時計を見れば今は午前の三時半。夜明けまではあと二時間半くらいだろうか。
(……せめてどちらかに偏ってればそれなりの対応が出来たんですけど。)
ふつうの人間だったらなりふり構わず人里に逃げ込むだろうが、母の血が大半を占めているから。
撃退できるかもしれないから逃げられない。
今ここでやっつけておけば後々襲われる人も減るかもしれない。
(安っぽい正義感ですよね…)
溜息をついて覚悟を決めて、後ろのゾンビ(?) 達に向き直った。
突然立ち止まったこちらを警戒するそぶりもせずに、口をあけて迫ってくる。知能は無いのかな。…なんとなくだが、食べようとしてる気がする。
「行儀のなってない子達ですねぇ。テーブルマナーもちゃんとできない子達に食べさせるものはありませんよっ!」
軽口を叩きながら足を真上に振り上げて、顎下から蹴り上げる。
あぁパンツ丸見えです(泣)
頭の前面が吹き飛んだけど、たぶんもう生きてる匂いもしないし最初から死んでいたのだろう。
ならこれは殺すのではなく、行動不能にしているだけだ。……たぶん。
とか色々考えていたら、いつの間にか全てのゾンビを倒していた。
もうピクリとも動かず徐々に灰になっていっているものもあれば、立ち上がろうとしているものもいる。
それらを見比べて、殺すには首をへし折るか、心臓に穴を開けるか、頭を吹き飛ばすことが有効なようだ。
…いったいどんな過激な殺し方したんですか私。無意識とはいえ怖いです。
やっぱり私って化け物なんですねぇ、と改めて思い知る。
(や、別に嫌なわけじゃないんですけどね。)
母さんもいつもはおっとりしてるけど、昔はハンターたちと血みどろのバトルをしてたらしいですし。
まあそれでハンターだった父さんと出会ったんですから、人生何が起こるか分からないよなぁ、と思います。
母さんの見た目、25,6歳に対して父さんは92歳まで生きた。全然ボケていませんでしたが。
私が67歳だから父さんが25歳のときの子ですかぁ。…少し複雑です。
観察したとおりに止めを刺せば、辺りは灰だけが山と積み重なった。
「さてと…これからどーしましょうか。」
ここは日本じゃない。
かといって瞬間移動したかというと、それも違う気がする。
日本の土の香りがしないし、湿度も高い。
地理的にはEUあたりだと感じるけれど、それだけではない。根本的な何かが違う。
直感が言う。
世界が違う、と。